YAMAHAが公開した「Piano Sheet Converter(β版)」を実際に使い、音源から作成されたピアノ譜の性能を検証しました。
本稿では、実際に楽譜化した動画を紹介しながら、原曲の再現性やピアノアレンジとしての完成度についてレビューします。
目次
- Piano Sheet Converterとは
- 実際に音源を楽譜化してみた
- 性能の検証と使ってみた感想
- おわりに
1.Piano Sheet Converterとは
Piano Sheet Converterは、音源ファイルを読み込むことで、ピアノ譜を自動作成できるアプリです。YAMAHAが公開しており、音源からの採譜やピアノアレンジの作成を支援します。
詳細は、公式サイトをご覧ください。
β版の利用条件
2026年9月21日現在、β版では無料で利用でき、作成した楽譜をPDFやMIDIとしてエクスポートすることもできます。
公式サイトの案内によると、正式サービス開始後も楽譜化機能自体は無料で利用できる一方、エクスポートなど一部の機能は有料となる予定です。今後、提供条件が変更される可能性もあるため、利用時には公式サイトの最新情報をご確認ください。
2.実際に音源を楽譜化してみた
今回は、下記の音源を使って、Piano Sheet Converterの性能を検証しました(音源は作者の許諾を得て使用)。
使用した音源
- 曲名: 吹く風に舞う遠い記憶そのままに - 花隈千冬【オリジナル曲】
- 作者: 雑費その他
吹く風に舞う遠い記憶そのままに - 花隈千冬【オリジナル曲】(YouTube)
今回は、上記の楽曲をMP3形式でPiano Sheet Converterに読み込ませました。
楽譜化の手順と結果
Piano Sheet Converterでは、楽譜の難易度を4段階から選択できます。今回は、最も難しい「上級」を選びました。
設定を確定すると、3分もかからないうちに楽譜が出力されました。
実際に出力された楽譜は、下記の動画からご覧いただけます。
また、作成した楽譜はPDFやMIDIとしてエクスポートできます。
今回は、エクスポートしたMIDIデータを音楽制作ソフト「SeeMusic」に読み込ませ、演奏動画として確認しました。その結果が、次の動画です。
3.性能の検証と使ってみた感想
実際に使ってみて、率直に「よくできている」と感じました。
出力された楽譜をまったく修正せず、そのまま演奏に使えるかというと、多少粗い部分はあります。しかし、必要な修正は限定的で、原曲の雰囲気を損なわずに聴けるレベルの楽譜が作成できていると感じています。
ここからは、原曲と聴き比べながら、性能を検証していきます。
今回の検証の視点
Piano Sheet Converterの主な用途は、次の2点にあると考えられます。
- 耳コピ(採譜)作業の効率化
- 目的や技量に応じたピアノアレンジの作成
公式サイトでも、「最初の耳コピが、とにかく大変」「アレンジの難易度調整が難しい」といった悩みに対する解決策として、本アプリが紹介されています。
そこで今回は、以下の2つの観点からレビューします。
- 原曲に対する再現の正確性
- ピアノアレンジとしての完成度
3-1.原曲に対する再現の正確性
全体として、原曲の作曲意図をおおむね正確に読み取れており、採譜の精度は高いと感じました。
メロディー
メロディーは、ほとんど正確に採譜できていました。一部、音が抜けている箇所はありますが、修正は比較的容易です。
なお、歌のメロディーと伴奏を比較すると、歌の部分のほうが再現性は高く、伴奏部分にはやや不正確な箇所が見られました。
コード・ベース
コードは、ほぼ原曲どおりに読み取れていました。特に、ベース音の再現性は高いと感じました。
テンポ
テンポは、原曲を正確に反映していました。
調・転調
原曲の調に対応した調号が設定されており、曲中の転調にも対応できていました(注1)。
装飾的な音やフレーズ
メロディーやコードだけでは捉えにくい音も、ある程度再現されていました。
例えば、今回の楽曲におけるBメロ直前のaugコードに含まれる装飾的な音や、ベースのルート音以外のフレーズ的な動きなどです。
こうした細かな音まで拾えている点は、印象的でした。
3-2.ピアノアレンジとしての完成度
左右のバランス
右手と左手の音の配置やバランスがよく、全体としてきれいにまとまった楽譜だと感じました。
難易度に応じたアレンジ
今回は「上級」を選択しましたが、難易度を変更すると、音数などが適切に調整されていました。
難易度に応じたアレンジという点も、しっかり対応できていると思います(注2)。
楽曲の雰囲気を踏まえた伴奏
伴奏部分は、単調なパターンを機械的に当てはめたものではありませんでした。
楽曲の盛り上がりや緩急といった温度感を読み取り、場面に応じて伴奏の形を使い分けているように感じられました。
単に音を拾って並べるだけでなく、ピアノアレンジとしてのまとまりを意識している点は評価できると思います。
4.おわりに
今回、Piano Sheet Converter(β版)を実際に使ってみて、採譜の正確性とピアノアレンジとしての実用性の両面で、高い性能を持つアプリだと感じました。
もちろん、出力された楽譜をまったく修正せず、そのまま演奏に使用できるかというと、現時点では難しい部分もあります。しかし、必要な修正が限定的で済むことを考えると、耳コピやピアノアレンジの作業を大幅に効率化できる可能性があります。
一方で、今回の検証にはいくつかの条件があります。
使用した楽曲は、主にストリングスとピアノで構成されており、コードも比較的素直なものでした。そのため、使用楽器の種類やコードの複雑さ、音数などによっては、再現性が変わる可能性があります。
今後は、異なるタイプの楽曲でも試し、どのような条件で採譜の精度やアレンジのクオリティが変化するのかを検証してみたいと思います。
現在はβ版であるため、今後さらに性能が向上する可能性もあります。現時点でも十分に優秀だと感じられる性能でしたので、今後の発展が楽しみなアプリです。
---------- ----------
(注1) 厳密に見ると、転調のタイミングが原曲の意図と完全に一致しているわけではありません。ただし、転調の解釈は聴き手によって判断が分かれる場合もあります。また、短い転調にも対応できていることを考えると、十分に高い性能だと感じました。
(注2) 今回の楽曲をピアノで演奏する場合、聴き応えという点では「中級」以上が適していると感じました。
一方、私はピアノ初心者なので、ピアノを始めたばかりの人にとって、「初級」などの難易度を選べることには大きな意味があると思います。
むしろ、上級者であれば、音数を減らすなどの難易度調整を自分で行える場合も多いでしょう。そのため、今後、初心者向けの楽譜のクオリティがさらに向上すれば、より便利に感じる人が増えるのではないかと思います。





