【記事の要旨】
税理士試験における理論暗記は,とにかく繰り返しが重要となります。そこで,各予備校の出版している法規集を読み上げ用音声合成ソフトを使用して音声にし,それをずっと流しておくという勉強法が有効なのではないかと考えました。ここでは,この方法のメリットデメリット,勉強の進め方についてまとめています。また,CDやボイスレコーダー録音等の他の方法との比較も行いました。
<税理士対策以外の方へ>
この記事は,税理士試験対策(条文を暗記して回答しないといけない)を念頭に記述していますが,大学受験をはじめ,他分野の勉強にも応用可能かと思われます。ご自身の勉強内容に合わせ,適宜読み替えながら参考にしていただければ幸いです。
いわゆる「覚えゲー」タイプの試験や勉強に対して,有効度が高いと思われます。
【目次】
1 勉強法の概要
2 音声学習のメリット
3 類似の学習法と比較したメリット
4 デメリット
5 実際の作り方
6 まとめ
1 勉強法の概要
ステップ1 法規集(マスター・サブノートなど)の内容を,文字データとしてパソコン等に取り込む。
ステップ2 音声合成ソフトに文字データを送り,音声を作成する。
ステップ3 2で作成した音声をスマホ等に取り込み,あとはひたすら流す。
参考までに,条文を音読した音声のサンプルを以下に貼り付けておきます。
動画は私が作成したものです。ソフトでは速度やイントネーションの調整機能などがありますが,この動画ではほとんどいじっていません。
2 音声学習のメリット
作成した音声データを流すだけであるという学習法の性質上,次のようなメリットが考えられます。
(1)勉強のハードルが低い。
そのため,例えば,勉強の気分が乗らないときでも,とりあえずまずは音声だけでも流してみて,やる気が出てくるのをしばらく待つ,みたいな勉強の導入としての使い方ができると思います。
(2)疲れているときでも勉強はできる。
とりあえず聞いてればいいので。質の問題は別ですが。
(3)そんなに疲れない。
これについても,とりあえず聞いてればいいので。勉強専念の場合などは,ずっと根詰めて勉強しているとしんどいので,こういうのも混ぜながらやってみると嫌になりにくくなると思われます。ちょっとした気分転換もかねて。
3 類似の方法と比較したメリット
類似の方法として,A予備校の出してる音読CDを購入する,B自分で音読・録音する,といった方法も考えられます。こうした勉強法も有効な手段だと思うのですが,ここでは,これらと比較したメリットについて書いていこうと思います。
3―A CDとの比較
(1)お金がかからない。
自作すれば無料で勉強可能なので,費用面で節約できます。
(2)好きな声で聴ける。
無料で使用できるソフトは複数酒類あります。また,ひとつのソフトの中にも声が複数あったりもするので(VOICEVOXの場合は10種類)あるので,好きなものを選び放題です。
理論によって読む人(声?)を変えれば気分転換にもなりますし,「この理論は誰々が読んでたやつだ!」みたいな覚え方・思い出し方もできるかもしれません。
(3)好きな読ませ方ができる。
学習にあたって,好みの理論の読み方などが人によって異なってくると思います。例えば,
①「者」「物」「もの」を「しゃ」「ぶつ」「もの」と読み分けてほしい
②条文の「(」を「かっこ」,「)」を「かっこ閉じ」などと読んでほしいor読んでほしくない
など挙げるときりがないと思います。こういったものも任意にカスタマイズできます。
3―B 自分で音読との比較
(1)自分の声よりいい声の場合。
自分で音読する場合,自分の声が良い場合は問題ないのですが,自分の声がそんなに良くない/好きではない場合は,より好きな声を選べるソフトの方がいいと思われます。
(2)途中でかむリスクがない。
理論を読んでる途中で,ずっとすらすら言えるとは限りません。セリフをかんだりするリスクもあると思います。このとき,やり直しをしないとずっとセリフをかんだ理論を聞くことになりますし,取り直しは面倒です。「かんだらやばい」と思いながら収録するのもストレスかと思われますので,この点もソフトのメリットでしょう。
4 デメリット
次のような点は,この勉強法のデメリットであると思われます。
(1)合成音声が苦手。
そもそも,音声合成ソフトによる,人の声でない音声が苦手という方にはこの勉強は向きません。ソフトの技術力が高いので,人が特に何の調整もしなくてもわりと自然に話してくれはするのですが,それでも気になってしまうという場合はどうしようもないです。
(2)音声の作成が面倒。
音声を自作しなければならないので,それはかなり面倒です。何度も作業していくうちに効率化はしてきますが,それまでがしんどいですし,ずっと作っていると作業に飽きてきます。
忙しく時間がないという方には不向きと言えそうです。
(対処案)Aランクの理論だけ,自分が覚えにくいと思う理論だけ作成するなど。
(3)勉強時間が長くなる。
ソフトがゆっくり再生するのを聞くことになるので,単位時間あたりの勉強の質は低くなる可能性があります。こればっかりするわけにはいかないでしょう。
(4)ずっとイヤホンをしてないといけない。
呪文のような税法(または財表)の条文は,周囲の人が聞いて気持ちの良いものではありません。周囲に人がいるときはイヤホンをすることになります。
(5)勉強した気になって満足してしまう。
ぼーっと聞いてるだけでも,音声がひととおり理論を読んでくれはするので,それだけで満足してしまう恐れがあります。「単調な音声を聞くだけ」での集中が苦手な人はこればっかりしてしまわないように注意しておく必要があります。
(6)理論の内容にミスが発生する可能性がある。
ミスに気付いて「作り直しか…」と,テンションが下がる原因となります。こうした気持ちになるリスクにさらされます(予備校CDではこういうことはないはずです)。また,ミスにずっと気付かないのも,それはそれで問題です。
5 実際の作り方
作り方の一例を簡単に紹介します。私がこのやり方でやっているというものです。使用ソフトはあくまで一例であり,これよりいい方法があるかもしれません。
(使用ソフト)
・文字認識ソフト「vFlat」(スマホアプリ)・・・あくまで一例ですが,これは認識の精度が高いので個人的にはおすすめです。
・読み上げ用音声合成ソフト「VOICEVOX」・・・無料で使用可です。声の種類が豊富です。
ステップ1 法規集の内容を,文字データとしてパソコン等に取り込む。
・文字認識ソフト「vFlat」で法規集を撮影し,文字データとして認識します。それ以降はパソコンで作業したいので,メール等を使って任意のパソコンに文字を送ります。ほとんど誤認識はしませんが,文章を一応チェックしておきます。
(補足)
・文字を機械で読み取らず,勉強もかねて直接自分で理論を打ち込んでもいいかもしれません。私もワードに理論を打ち込む,を何度かしました。
ステップ2 音声合成ソフトに文字データを送り,音声を作成する。
・スマホから送られてきた文字を「メモ帳」などに保存します。
・音声合成ソフト「VOICEVOX」を起動し(あらかじめインストールしておく必要があります。),上記「メモ帳」に保存したテキストを呼び出します。「VOICEVOX」はtext形式など,特定の種類のファイルでなければ呼び込みできないので注意が必要です。
・あとは,音声ソフトにしたがって音声データを作成します。
(補足)
・「VOICEVOX」は,一文が長すぎるとエラーが起こるので,ソフトにテキストを呼び出すより前の段階で文章を区切っておくと便利です。
・読み方のカスタマイズ(「者」「物」「もの」など。)は,ソフトの辞書機能を利用する,テキストの段階での加工,などいくつか方法があります。効率的なものを見つけてください。(私は両方を併用しました。)
6 まとめ
ここまで,理論を,読み上げ用音声合成ソフトを使用して音声にし,それをずっと流しておくという勉強法を紹介しました。
比較的時間に余裕があり,勉強にメリハリをつけたいという場合には有効と思われる一方,音声を作っている時間がなかったり,合成音声が苦手な場合にはあまり効果的ではないものと思われます。
自分がこれと思った理論を数個だけピックアップして作る,もありかと思います。
(参考)
無料ソフト VOICEVOX: https://voicevox.hiroshiba.jp/
当記事公開日:2022/04/26